INTERVIEW&COLUMN

2017.10.16

大崎章監督×外山文治監督 対談インタビュー 後編

大崎:インタビューを聞いている人に言いたいけど、普通、上映の交渉は配給会社がするものです。それを一人で配給宣伝をやっている監督はあまりいない。製作から配給宣伝までを一人でやるということについて何か思うことは?

外山:今、自分で支配人を訪ねて「上映させてください」とお願いしています。
あと、映画を撮れるかどうは(プロデューサー等)他の人が決めるので、映画監督は自分で決められない。だから、最後の最後は自分で作れる術を持てる人がいいと思う。今回成功例ができたわけなので、私だけでなく他の人もできると思います。

大崎:くすぶっている後輩たちに対する思いもある?

外山:あります。色んな作品があってもある程度同じ監督が撮ってるでしょ。ということは色々あぶれてる人たちがいて、風を待っている状態だと思います。
でも、そうではなく風を起こすつもりのほうがいい。『燦燦 さんさん』はいきなり36、7館でデビューできたのですが、風に乗せていただいたので、今回は再デビューというか、風を作っていく実感はあります。

大崎:それだと長編の依頼も来たんじゃない? それも断ったの?

外山:来ましけど、断りました。2本目を撮れても3本目は撮れないと思って。生活のことを考えると受けようとも思いましたけど、まだ若くて。

大崎:『わさび』の芳根京子さんの素晴らしさはどう引き出しましたか?

外山:芳根ちゃんはちょっと特別な子なので引き出したということでもないです。ただ、自分が間違えたら彼女の良さを生かしきれずに終わる不安や緊張がありました。
彼女のお芝居は豪速球の大谷翔平みたいなもので、それを受け止められる人材がなかなかいなくて。それで、お父さん役は劇団を主宰されている方、学校の先生役も小学校などの演劇教室で毎日のように芝居をしている方たちなので、そういう方ならあの豪速球を受け止められるなと。

大崎:俳優さんに自ら手紙を書いて出演交渉したとのことですが、OKしてくれなかったら?

外山:もしダメならご縁がなかったと受け止めます。
会えない方もたくさんいらっしゃるので手紙はよく書くます。

大崎:そうそう。一般的にはインディーズだったら事務所に電話するんじゃない。でも、本人とは口をきけないからマネージャーと話して台本を送る。

外山:時には、ご本人用とマネージャー用に手紙を書きました。ダメだったら諦めるけど、どこかで信じてるところがありますね。

大崎:一緒に作品を作りたいと思う俳優さんはどのような人? いい役者さんを一言でいうと?

外山:よく言われますけど、“ずっと見ていたい人“と言うことでしかないですよね。理由はわからないですけど、モニターを見ていても芳根ちゃんや吉行さんはずっと見ていたいと思っていました。いい役者さんに関しては“技術”ですね。
蜷川幸雄さんも「脆弱な芝居しかしていないと若い監督さんにしか通用しない、そう言う軟弱な芝居は俺には通用しない」と稽古場で言っていました。

大崎:軟弱な芝居とそうじゃない芝居はどこが違いますか? 若い俳優は骨太な芝居を目指さないといけない。僕らは俳優を導いていかなきゃいけない。
そのためには役者が日々どう努力をしなければいけないか、俺はいつもワークショップでこのことを考えているけど要は“生き方だろう”“考え方だろう”としか言わないんですよ。

外山:自分はまだ私生活の導き方はわからないですよ。“生き様”みたいなものですかね。

大崎:導くためには、俳優たちになんで役者やってるの? と言う話になっちゃう。そして、僕たちはなんで監督やってるのって言う話になっちゃう。これはどう思いますか?

外山:とにかくものを作りたいということですね。

大崎:ただ、あの芝居を引き出しているというのは相当根気がないとダメだと思うんだよね。

外山:それは本気も本気、心中するつもりでやってます。意外と自分、小さい頃から病弱だったんですね。学校もすぐ休むし。今だって体が弱いしきっと長生きできない。だから割と命を簡単にかけてしまうんでしょうね。現場って不思議ですよね。

大崎:現場にいるとアドレナリンが出て、それが良いときも悪いときもある。みんなのエネルギーが一緒になるっと作品も変わってくる。だから一人で作るのとは違う。それが楽しいのかなと。

外山:そうですね。小説を選ばなかったのはそこですかね。しかし良い役者の条件かあ。
中原俊監督の助監督をやっていた頃、オーディションの時に「どういう生き方をしてきたかとか、どんな『ニュー・シネマ・パラダイス』のようなエピソードを持ってこの場に立っているかは一切興味ない。
今回の役を演じるにあたって上手い人、一番作品を良くしてくれる人に出会うだけ」と言われていて、そういうものだと私も思いました。小さい頃から映画好きなのは大前提で、その中でどれだけ豪速球を投げられるか。
役者を目指す人たちのために言えば、小さい悩みをぶっちぎるエネルギーを持ってほしい。
ただ、突出した個性を出せということではなく、強度なんですよ。私は今、宣伝もやっているので悲しいかなエゴサーチをしなければいけない。
そうすると、誰一人自分の作品を天才だなんて言っていない。でも、強い、足腰の鍛えられたものみたいな言われ方をされて、それでリピーターが増えてくれる。個性的ということではなく、強い役者になってほしい。それしか言えないですね。個性的でなくても天才でなくてもいい。一緒に映画を作りましょう。

シャルマン 本店 (取材場所)

■住所:〒150-0046 東京都渋谷区松濤 1-29-3
■営業時間:8:00~19:00
■電話番号:03-3461-5757

AUDITION&EVENT

mirroRliarの特別なオーディション&イベント情報