INTERVIEW&COLUMN
2018.01.05
『愛の病』吉田浩太監督インタビュー
2002年に起きた「和歌山出会い系サイト強盗殺傷事件」を基にした官能サスペンス『愛の病』が、2018年1月6日に公開される。出会い系サイトで知り合った男性に大金を貢がせた主人公・エミコが、男を操り強盗殺人犯にまで仕立てる模様を描いた本作。
メガホンを取った吉田浩太監督に、撮影エピソードやエミコ役に体を張って挑んだ瀬戸さおりについて話を聞いた。
ーーまずは「和歌山出会い系サイト強盗殺傷事件」を題材に映画化した経緯を教えてください
『スキマスキ』でも一緒に仕事をした株式会社ステアウェイの木村俊樹プロデューサーが『冷たい熱帯魚』とかも手掛けられていた方で、こういう実際に起きた事件にアンテナがある方でした。
この事件も少し話題になっていて僕もやりたいと思っていたら、3年くらい前に企画をいただいて。それから自分でも調べながら作った作品です。
ーー映画化するにあたって事件のどの辺に惹かれました?
言葉は悪いかもしれないですけど、最初は非常に滑稽な事件だなと。共犯になる男性も被害者の方もみなエミコに騙されてしまうんですよね。
なぜそんなに信じてしまうのか、そこがある種滑稽にも思えて、事件の衝撃さというよりはそういう人間のおかしみみたいなものが大きかったと思います。
それで、調べていく中でエミコという人物が根源的に持っていた愛が、ある種病のように彼女を蝕んでそうさせてしまったのではないかと。
ーー瀬戸さんとはエミコ役についてどう話し合いました?
まず、エミコは子供がいても男をつくってしまったりするし、本能的な人物だとは話し合いました。
瀬戸さん自身とは全く違う人物ですが、そういう本能的な部分は人間誰しも持っていると思うので、そこには嘘をつかないで芝居をしてほしいと。
本人は全く違うタイプなので大変とは言っていましたけど、なかなかこういう人物を演じる機会もないので楽しかったのではないかと思います(笑)
ーー瀬戸さんはそれにどう応えたのでしょうか?
瀬戸さんは真面目で一生懸命取り組んでいました。打ち合わせの二週間後に衣装合わせをした時にはまるで別人のようになって来たのを覚えています。
見た目だけではなく雰囲気もすごくエミコっぽいとスタッフと驚きましたね。
ーー瀬戸さんは吉田監督のワークショップも受けていたそうですがエミコの役をオファーしたポイントは?
正直、この役は本能的な部分を研ぎ澄ます感受性があれば誰でもできると思います。
でも、その響き方みたいなものには温度差があるので、彼女はそれが非常にビビットに反応できる子だったんですね。
ワークショップ中に演技に対する本気度も感じましたし、集中力も高いので何かしら追い込めば面白いものになるだろと。
撮影中も2~3テイク行えば自分なりのものを出せる子だったので、環境さえ用意してあげれば大丈夫でした。
ーー生々しいラブシーンもありましたね
実際の事件がベースなのでラブシーンも含めて全体的にリアルにしようと考えていていました。
女優さんにとって濡れ場は大変ですけど、彼女はやると決めたらやる度胸があるのでとてもやりやすかったです。
方法論として濡れ場がある時は先に撮ってしまった方が女優さんも楽になるので先に撮る事もありますが、今回はスケジュール的に真ん中くらいに撮りました。
彼女はプロポーションが大丈夫かどうかをずっと心配していましたけどね。そこは大丈夫だと(笑)
ーーラストシーンは観客にどう受け止めてほしいですか?
エミコは愛に翻弄されてうまく生きられない女性だと思います。それは孤独から逃げる事でもあるけど、結局自分の孤独を認めざるを得なくなる。
ただそこから先、ラストでエミコが孤独の中でどうなっていくのかは、見ている人に委ねようと思いました。
映画の見方によってラストの印象が大きく変わるので、あえて委ねることで、見ている人の映画への主体的な感想を持ってもらえればと思っています。
(取材・文:中村好伸)
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