“無料で楽しめるインターネットテレビ局”「AbemaTV」が、2016年4月の開局以来初となる完全オリジナル連続ドラマ『#声だけ天使』を制作し放送を開始する。本作で“陰”のあるヒロイン・安西さくらを演じたのが、女優として活躍中の仁村紗和さんだ。モデルとしてキャリアをスタートし、女優業へまい進する仁村さんに、「mirroRliar」の読者に向けて、オーディションへの挑み方や、どのようなモチベーションで俳優業に取り組んでいるかを語っていただきました。

オーディションで見事、ヒロインの座を勝ち取った仁村さん。果たして彼女はどんなスタンスでオーディションに臨んだのだろうか。

「役柄へ寄せていくというよりは、自分の持っているものをしっかりと出し切ることを意識していました。今回のさくらという役は陰を持つ女性ですが、尾形監督が、私のなかの“陰”を見つけ出してくれたことが、合格できた理由なんだと思います」

メガホンをとった尾形監督は、仁村さんを「筋道を立てて役柄を作り込んでいくメソッドタイプではないのに、陰が見えた。非常に女優向き」と素材の良さを強調していた。

「もともと女優さんという仕事を志していたわけではなく、ずっとダンスをやっていたので、ダンサーになりたかったんです。そこから偶然、モデルのお仕事をさせていただくようになったのですが、ダンスをやっていたので、ポージングとかがあまり苦にならずにできたこともあってか、モデルのお仕事も増えてきました。CMで演技をする機会もあり、だんだんと表現することに欲が出てきたことが、女優さんを目指したきっかけです」

目標が定まったものの、経験がない。多くの人が陥りやすい状況……。

「お仕事が全然ないときは、もともと映画が好きだったので映画をたくさん観たりしていましたが、なにを頑張ったらいいのかわからない状態でした。お芝居の勉強もしていましたが、私は大阪弁が結構出てしまうことが多いので、アクセント辞典を見ながら、標準語のイントネーションを徹底的に叩き込みました。それでもやっぱりチャンスというものはそれほど多くはないので、一つ一つを大切にしていくしかないんですよね」

少ないチャンスをものにするため、日々努力を重ねること。言葉でいうのは簡単だが、実際はなかなかモチベーションを保つのは難しい。

「当たり前ですが、私もオーディションは圧倒的に落ちる方が多いです。最初のうちは『100回落ちることが目標』なんて思いながらやっていました。たまに落ちた理由を教えていただいたりしますが、基本的には役柄に合わなかったんだと思って前に進みます」

連続ドラマのヒロインという役柄を得て、それぞれオーディションを勝ち抜いた俳優たちと意見を交わしながら作り上げていった現場。仁村さんにとっては貴重な体験だったという。

「今回、尾形監督の現場を経験して、自分のキャパシティの狭さを実感しました。監督が一緒に戦ってくれる方だったので、助かりましたが、ピリピリした現場だったら取り乱していたかもしれません。本当に皆さんが一つのものを作ろうという同じ気持ちで戦っていただける方々だったので、思う存分、自分なりの解釈で進められたと思います」

大きな経験をして演じることへ更なる欲求が高まったという仁村さん。

「映画が好きなので、映画の仕事に携わっていきたいですし、質も上げていかなければいけないと思います。『アデル、ブルーは熱い色』がすごく好きで、レア・セドゥみたいな女優さんに憧れますし、西川美和監督も好きなので、いつかご一緒できる機会に巡り合うまで頑張っていきたいです」

少しずつ活躍の場が広がっているが、まだまだ向上心を持って臨まないといけないという自覚があるという。演じるというまだ土俵に立てない人には、どんなことを心がけて生活をすればいいのだろうか。

「私は色々な出来事や人に興味を持つようにしています。特に人がどんなことを考えているかを観察するのが好き。人と接することによって、良い感情だけではなく、不細工な自分や、気持ち悪い自分が出てくるので、そういう感情としっかり向き合うことも、演じるといううえでは大切なことだと思っています」

（取材・文・写真：磯部正和）