INTERVIEW&COLUMN

2018.04.02

大崎章監督×山下敦弘監督 対談インタビュー 前編

ーーまずはじめに、山下監督は山田孝之さんとドラマなどでご一緒されていますが、山下監督から見た山田さんの印象を教えてください。

山下:俺より全然若いけど、親分肌っぽいところがありますね。
でも、威圧感があるわけでもなく、実はすごく周りが見える人なんですよね。
芯を持っていて、すごく良い意味での独特の緊張感があって。そして、たぶんプロデュースが好きなんだろうなって。この人とこの人をくっつけるとか。みんなで一緒に作っていくっていうのがすごい好きな人なんで。

ーー大崎さんとの出会いと関係性を教えてください。

山下:『リンダリンダリンダ』(05)ですよね。
大崎:ですね。すごく楽しかったよね。
山下:初めてプロのスタッフとやらせてもらって、正直どの部署がどんな動きをしているのか、わからなかったんです。自主映画の時はカメラマンとか照明とかはなんとなくわかっていたんですけど、助手の動きがよくわからなかったですね。特に演出部が。
今まではほとんど助監督がいなかったんで。いわゆるプロの助監督が何をするのか全くわかってなかったんですよね。
大崎:若い学生たちに「俺、あの作品やってたんだよ」とかいうと、「マジ神」とか言われるの(笑)評判いいよね、すごく。
山下:嬉しいですね。今の若い人たちもブルーハーツは古くないから。でも当時撮ってる時はいっぱいいっぱいでしたけどね(笑)
大崎:今思えば、すっごいタイトな撮影スケジュールだったよね。
山下:10年前くらいですけど、あんまり今と変わってないですよね。
大崎:変わってない、むしろ更にタイトになっている感じ。

ーー山下さんの映画との出会いを教えてください。

山下:5歳くらいの頃に、『E.T.』を観たのが初めですね。その後、スピルバーグ作品とかハリウッド大作とかジャッキーチェンがずっと好きで。

ーーでは、映画監督になろうと思ったきっかけは何でしたか?

山下:一番の理由は大阪芸大に行ったことですかね。
大崎:大阪芸大に入って、映画のいろは的なことを教わったの?
山下:映画哲学みたいなものではなくて、とにかくお前らフィルム詰めろ!みたいな実践的な感じでした。最初っからもう16ミリのフィルムをいじらされて。
大崎:熊切(和嘉)監督の『鬼畜大宴会』(97)は何年生の時?
山下:俺が1年で、熊切さんの卒業制作でした。俺の寮の部屋に熊切さんが来て「君、映画好きなんでしょ?」みたいな感じで、手伝ってよって『鬼畜大宴会』の話をしてくれて。
大崎:その後、『どんてん生活』(99)、『ばかのハコ船』(02)、『リアリズムの宿』(03)、『くりいむレモン』(04)と続いていって、『リンダリンダリンダ』だよね。めちゃくちゃ良い階段登ってるじゃん(笑)でも、その流れで急に女子高生4人って、ありえないよね(笑)
山下:でも、あの作品で自分の世界が広がった感じがしましたね。俺、女の子も撮れるんだって思って(笑)それまでの作品は、男性は情けなくて、女性はちょっと芯がある感じが多かったんですけど、『リンダリンダリンダ』は、女の子たちの個性をちゃんと作れたので、あれは発見でしたね。

ーー映画づくりで大切にしていることは何ですか?

山下:単純にキャスティングは大切にしてますね。こだわるというか粘るというか。誰でもいいってことは今までなかったですね。
山下ワールドとか言われるのは、キャスティングなんじゃないかって最近思います。自分のバランスとか癖が。あと、組むプロデューサーによっても、キャスティングも変わってくるなあって思いますね。
大崎:キャスティングには、どれくらいこだわるの?
山下:もちろんメインは居るけど、お調子者もいれば、全然話さない奴もいるじゃないですか。あと、ムードメーカーってだけな奴もいるし、センスある奴もいる。
自分の中で、同じタイプの匂いのする人たちだけ集まるとつまらなくなるので、なるべく変えようって思っています。
大崎:なんかいいですね、料理みたいな感じで。料理はいろんな素材があるから綺麗に見える、みたいなね。
山下:あとは、映画によってはこの人入れたらどうなるんだろう?っていう化学反応みたいなものを期待する人もいますよね。子役だったりとか老人とか。

ーーオーディションでの、山下監督なりのポイントやこだわりがあれば教えてください。

山下:なんだろうなあ。その都度役によって違うんだよね。なんか引っかかるアレですよね。
アレはなんなんですかね?
大崎:アレは魅力だよね。多分、監督なら誰が見ても感じるもの。
でも言葉で説明できない(笑)。
山下:それこそ、山本浩司さんに学生時代のデビュー作に出てもらった時も「あの人は何を考えているんだろう?」とかずっと考えちゃって、一方的な片思いみたいな感じでした。
大崎:山本さんが面白いんじゃないの?
山下:面白いです。彼は全然喋らないですし、学生時代もずっと「どよん」としていたんですよ。それですごく想像力が湧いたというか。
大崎:湧かせられる人ですよね。
山下:大きくいうと、空っぽな人の方がいいかもしれないです。
何もない人の方がいいですね、僕は。想像力が働くというか、この人をこういう役に入れたらどうなるんだろうかとか考えるかも。
大崎:みんな自分に色をつけようと努力するけど、逆だよね?
山下:俺は逆ですね。ただ、空っぽだけど、山本さんのキャラっていうか目を惹く器があるじゃなですか。それが魅力だと思うんです。
大崎:空っぽ感があるっていうのは、許容があるんじゃない?
山下:役者の「演技してないと生きていけない人」って、好きなんですよね。
必要だから演技をする人の方が説得力があるなって思って。普段からエネルギッシュな人って、芝居しなくていいじゃんって思うんですよ。
今回リーゼントでこうやってくださいって言った時に、その人の中の何かが埋まって、ちょっと生き生きするじゃないですか。あれがいいですね。

取材店舗:阿佐ヶ谷 KEGON

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