『好きでもないくせに』、『スキマスキ』などの代表作をもつ監督・吉田浩太さんの連載コラム。
以前コラムでもご紹介いただいた「愛の病」がイタリアのローマで行われたアジアンフィルムフェスティバルで最優秀主演男優賞を受賞しました。
第3回は「愛の病」で最優秀主演男優賞を受賞した俳優の岡山天音さんについて書いていただきました。

以前、このコラムでも紹介させて頂いた自作の「愛の病」ですが、6月の上旬にイタリアローマで行われたアジアンフィルムフェスティバルという映画祭で、主演の1人である岡山天音さんが最優秀主演男優賞を受賞しました。
しかしこの映画祭が中々小さな映画祭だった故、大々的に紹介されることもなかったので機会にコラムで残しておければいいな…と思いまして、今回は受賞した岡山天音さんという俳優について書かせてもらいます。

「愛の病」で岡山天音さんが演じてくれた役は、仁志真之助という、実際にあった事件を起こした人物をモチーフとした役です。
映画の中でこの真之助という人物は、もう一人の主役である瀬戸さおりさんが演じる原田エミコという悪女に、ただひたすら騙されお金を貢ぎ続け、最終的にエミコのために殺人を犯してしまう、というとても愚かな行為をしてしまいます。

最終的に殺人まで行き詰めてしまうそのキャラクターは、端的に言うと所謂「おバカ」なキャラクターと言えるのですが、この「おバカ」さをどのように演じるか岡山さんと話をしました。
岡山さん自身は非常に聡明な方なので、このような役を理解することに困難さを見せていたのですが、いざ現場になると岡山さんが演じる真之助は、誰がどう考えても岡山さんそのものが真之助として「おバカ」になりきるリアリティを持っているように思えました。

岡山さんは何の無理もなく、真之助として映画に存在することが出来ていたのです。

真之介というある意味破天荒なキャラクターが、今回の映画祭で最優秀という評価を受けたというのは、そこにしっかりしたリアリティがあったからなのだと思います。
岡山さんは真之介のキャラクターを演じる時に、おそらくそこまで難しい役作りをしていないように思いました。
誰にでもありうる人間の駄目さ、愚かさを岡山さん自身の何かに結び付けて一番シンプルに演技をしていました。

そんなシンプルなアプローチがあったからこそ、誰の目にも彼の演技が真に迫るものになり、今回の映画祭での主演男優賞受賞と言う形になったのかなと思います。

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