INTERVIEW&COLUMN

2017.08.01

14歳〜初めて映画をつくりたいと思った日〜

やがてわたしは中学3年生になり、高校進学を決めなくてはいけなくなった。
知り合いが誰もいかない高校に行く、ということを決め、わたしは塾に通わせてもらえることになった。

塾までは、電車で1時間。生まれた県の中でいちばん大きな街にある塾。
電車に揺られ、田園風景や山々を越えて到着したその街は、別世界だった。
立ち並ぶコンビニ、ファミレス、居酒屋、背の高いビル。

今思えばただの地方のターミナル駅というだけだったのだけど、それでも、当時の自分にとっては都会だなぁと感動するレベルだった。

塾には週2回、うち1日は学校が終わってからの夜間の時間帯。もう1日は日曜日の昼間の時間帯。
日曜日の塾の終わりで、わたしは毎回、街を散策して帰った。

お昼ごはんを買うためのお金をもたされていたので、それを遣ってひとりで牛丼屋さんに入ってみたり、おしゃれなパン屋さんで見たことのないパンを買ったりした。いろんなことが初めての体験だった。
大きな本屋さんは平気で2〜3時間見ていられたし、雑貨屋さんを見ていつか一人暮らしをする日の部屋を空想したり、ただただ駅を行き来するひとを観察したりしていた。

あるとき、本屋さんで1冊の雑誌に出会った。
真っ白な表紙に赤い枠と本のタイトル。その真ん中に外国の女の子が笑っている写真。

シンプルな感じなのに、正方形に近い本の形も、紙質も、どこか上品で、今まで地元の小さな本屋さんや、歯医者さんの待合室や、同級生の女子が回し読みする中ではぜったいに一度も見たことがないような雑誌だと思った。
数ページちらちらめくり、わたしはすぐにその日のお昼ご飯を諦め、代わりにその雑誌をレジに持っていった。

電車に乗りながらも、家に帰ってからも、何度も何度もその雑誌を読んだ。
東京の路地裏にある小さなお店、北欧の旅行記、アンティーク雑貨、おばあちゃんのエプロンコレクション、聞いたことのない海外の映画の紹介。

大ぶりな写真とシンプルな構成の紙面の中に載っているものは初めて知るものだらけなはずなのに、すべてがわたしの好きな世界だと思った。
その雑誌が月に2回出るということを知り、わたしの楽しみは増えた。毎回毎回その雑誌を買った。

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