INTERVIEW&COLUMN

2017.08.14

様々な「寄り道」や「観察」も必要

映画プロデューサーとして『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』、『ディストラクション・ベイビーズ』、『子ぎつねヘレン』などを手がける石塚慶生さんの連載コラムが始まります。
第一回は「役」を成長させる上で大切な「寄り道」や「観察」について語っていただきました。

石塚慶生(いしづかよしたか)

1969年鳥取県米子市生まれ。早稲田大学を卒業後、1992年に東北新社に入社し、テレビコマーシャルの制作に関わる。 2003年に松竹に入社し、映画プロデューサーとして『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』、『ディストラクション・ベイビーズ』、『子ぎつねヘレン』などを手がける。
『わが母の記』(2012/原田眞人監督)は第35回モントリオール世界映画祭で審査員グランプリとなり、プロデューサー個人に与えられる第32回藤本賞・奨励賞も受賞した。
2016年に公開された『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』(三木康一郎監督)は興収22億円の大ヒットを記録し、岩田剛典と高畑充希が日本アカデミー賞新人俳優賞、日本映画批評家大賞新人男優・女優賞を受賞。『ディストラクション・ベイビーズ』(2016/真利子哲也監督)は、第38回ナント三大陸映画祭で準グランプリを受賞した。

「役」を成長させる過程の中では、様々な「寄り道」や「観察」も必要

いい歳をして、常にいい具合のゆで卵を上手に作ることができないし、殻もうまく剥けません。元来のこらえ性のなさもあるのですが、一方で様々なゆで時間に設定してみて、どのようにゆで上がるのかをそれぞれ試してみたいということでもあります。

「マニュアル通りが嫌」というとカッコよく聞こえるかもしれませんが、設定された規定の道を試しに外れてみることで、もっと面白いものができるかもしれないと思う発想を大事にしたいのです。でも、たまにはクックパッドを検索して、ゆで時間をきっちりとタイマーで計測して、作ったりすることもあるんですが。

マニュアル通りに作ったり作らなかったりして試すことは、街中で普段聴かないような曲に出会った時にShazamで検索したり、ずっと赤ワイン派だったけど白ワインを飲んで味わってみることや、ホラー映画は最近ほとんど見なかったのに、薦められて『IT FOLLOWS』を観てみることなんかと似ています。

そういう行為は多分すぐに映画にはならないけれど、そんな「寄り道」や「観察」は、きっと自分が映画を作る上では、プロデューサーとして役に立つはずだと信じています。

一方、俳優について考えてみます。
俳優とは、台本上の人物を緻密に再現する仕事と思われがちですが、実はいまこの世には存在しない「役」を生み出す仕事です。そして、その土台になるのは「自分」です。
自分の中に元々ある地面=「畑」に、与えられた台本、舞台環境、所作、演出、周りを囲むキャストとの間合いなどの「肥料」を与え、役を育てること。俳優になるということ、そして「役」を成長させる過程の中では、様々な「寄り道」や「観察」も必要なのではと思います。

いろんな役の作り方を試しながら試行錯誤することで、役が立体化し、人間らしくなっていく。そうして人間味を帯びた役はテレビ画面やスクリーンの中で孵化し、羽ばたき、観客に発見されることになるのです。

mirroRliarというサイトのことをお聞きして、そんなことを思いました。ここで与えられるものは、学びのための場や俳優を目指す人たちが知っておくべき情報に加えて、長い目で見て大きな手助けになるであろうそうした「寄り道」のヒントでもあるんだろうと思います。mirroRliarに期待しています。そして、そこにお声がけいただき、参加させていただくことを嬉しく思います。
まずは第一歩おめでとうございます。そして何卒よろしくお願いいたします。

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