INTERVIEW&COLUMN

2017.08.26

是枝裕和監督&脚本家・坂元裕二トークショーレポート

最新映画『三度目の殺人』が公開を控える映画監督の是枝裕和と、ドラマ「最高の離婚」や「カルテット」などの人気脚本家・坂元裕二が8月25日、Apple 銀座で開催されたイベント「Perspectives」に出席し、互いの作品論などを熱く語り合った。

「Perspectives」は影響力あるクリエイターたちが自身のクリエイティブな製作過程を語ったり、才能を披露する人気プログラム。今回は是枝監督の映画『三度目の殺人』、坂元が脚本を執筆したドラマ「カルテット」を題材に、脚本を書く上でのポイントや、脚本と俳優の関係などが語られた。

まずテーマとなったのが“あて書き”について。一般的な意味としては、特定の俳優をイメージしてキャラクターを描いていくことだが、これまで数々のヒット作を世に送り出している人気脚本家の坂元は「あて書きってなんでしょうね、僕はわかっていないかも」と疑問を呈する。

すると是枝監督は「(主演の)福山(雅治)さんとは『そして父になる』の後から、『また一緒にやりましょう』と話していて、いくつか企画のキャッチボールをしたのですが、実現に至らなかったんです。その後、本作のアイデアを思いついて3〜4枚程度のアイデアレベルでオファーしたら、おもしろいということになったんです」と出演経緯を語る。
さらに殺人犯役の役所広司については「その後、ロングプロットを起こした段階で話をしました」と脚本が出来上がる前にオファーし、それぞれのキャラクを“あて書き”したことを明かす。

是枝監督があて書きする際「基本的には俳優さんの声を頼りにする」と語ると「例えばオーディションが終わったあとに脚本を読み返したとき、浮かんでくる声ってあるんです」と独特のポイントを挙げる。
また、俳優のパーソナルな部分を意識するのかという問いには「パーソナルな部分を知らない人も多いので」と前置きしつつ「福山さんは基本的に明るいエンターテイナーなのですが、書き始めると嫌な奴になってしまう。
蔑んだようなセリフがとてもうまくて声にもマッチするんです」とあくまで俳優そのもののパーソナルな部分とキャラクターは引っ張られないようだ。

『三度目の殺人』では役所が、「カルテット」では松たか子が圧倒的な演技を披露している。
役所は、累犯し現在拘留中というなか、本当に殺人を犯したのか、はたまたやっていないのか……という部分で、観ている人ばかりではなく、福山をはじめとする対峙する人間、そして是枝監督をも惑わせる役どころ。
「脚本を僕以上に読み込んでいて、役所さんの演技を見ていると、僕が自分で脚本を書いた気がしなかった」と苦笑いを浮かべると「付き人さんに『なんでこんなすごい演技をするんでしょうね』と聞いたら『誰よりも役のことを長く考えているんだと思います』といわれたんです。すごい役者というのは、特別なことをするのではなく、ちゃんと本を読んでいるんだなって実感しました」と感嘆していた。

松について坂元は「日本一のコメディエンヌだと思っているんです」と語ると「何を投げても必ず笑いがとれるし、しっかり返してくれる女優さんです」と絶賛。
是枝監督も「テレビドラマより圧倒的に舞台で生きる女優さんだと思っていましたが、『カルテット』で演じた(早乙女真紀という)役は非常に良かった」と語った。

また、イベント観覧者から「お金がもらえなくても映画を撮ったり、脚本を書きますか?」と質問されると、坂元は「お金になるかならないというより、僕は俳優さんに演じてもらうことが好きで、書くことのモチベーションになっているので、作品にならなければ書かないです」と語ると、是枝監督は「大学入ってモノを書いて飯が食えるようになりたい思っていたので、それが目標でした」と当時を振り返ると「映画監督って人のお金で作品を作るのですが、それって結構大変なんでよす」としみじみ。

その他にも、坂元が「脚本を書くとき、実際には書きませんが、『手がどこにあるんだろう』ということを意識して書くんです。
手の動きは第二の言葉なんです」とおもしろい視点を披露すると、是枝監督も「プロットを書くときにはキャッチコピーを考えるんです」とトークの端々に金言が詰まっていた。
(取材・文:磯部正和)

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