INTERVIEW&COLUMN
2017.10.09
大崎章監督×外山文治監督 対談インタビュー 前編
大崎:映画との出会い、映画監督になろうとしたきっかけは?
外山:最初は映画というよりは小説家になって、物語を作りたいと思っていました。宮崎に住んでいましたけど、田舎で娯楽がなかったので、映画を作るか、見るか。それで高校時代から友達と監督として実写映画を撮り始めたのが楽しくて。
大崎:高校時代の流行は?
外山:本広克行さんの『踊る大捜査線』やウォン・カーウァイ監督の『欲望の翼』『恋する惑星』を見ていました。『欲望の翼』は高校一年の時くらいに、『ブエノスアイレス』は高校三年の時に見て映画館で初めて座席から立ち上がれなくなる経験をしました。
大崎:じゃあ割と『ブエノスアイレス』はショックだった感じ? 『Shall we ダンス?』とかは?
外山:恋愛映画というジャンルの中での一番は今でも『ブエノスアイレス』と答えますね。高校時代から応援していた監督でしかもカンヌで監督賞を取りましたし。『Shall we ダンス?』は人生の一本という感じです。
大崎:最初に撮った映画はどんな内容?
外山:恥ずかしいですね(笑)。ウォン監督のパクリでした(笑)。当時はまだノストラダムスの大予言があった頃なので“最後に何をするか、何を食べるか考える男”というお話で。“最後に娘の仇をとる男”みたいにトニー・レオンぶっていたと思うけど、その時はそういう事をするのが楽しかったです。それで、日本映画大学に行こうと。
大崎:なぜ日本映画大学に?
外山:1人でやるのとは違う喜びを知ったからですかね。でも、大前提としてウォン監督も自分で物語を書いて映画を作っていたし、映画の世界に行っても自分で書けると思っていました。それは大きな勘違いでしたけど。
大崎:じゃあ、映画監督になろうと思ったきっかけは、ウォン・カーウァイと言っても過言ではない?
外山:ちょっと違いますね。映画が面白くて続けていたら監督になっていたという感じです。
民放が2チャンネルしかなくて、だからこそダイレクトに憧れがエンターテイメント業界にありました。お話を作る人間になりたかったけど、映画が公開初日・2日目で何億稼がなければならないという巨大な市場になっている中で、ファンのいない作品がじわじわいったところで厳しいし、オリジナルを書かせてもらえない事はしょうがないとは思います。
佐々部監督とも「映画を作る体力が東宝にしかなく、あとはお金はみんなの持ち寄り(製作委員会方式)だからなるべくリスクがないようにしなければいけない」とお話した事があり、「少女漫画を原作に人気キャストがシャッフルして順番に出る悪循環になってしまっている」と仰られていました。
大崎:今までインディーズ映画を作ってきたけど、映画を作る体力が東宝にしかない現状に対しては?
外山:根がミーハーだからメジャーへの憧れもあります。
いまだにフジの「27時間テレビ」を見ているとなんで俺はそこで働いていないんだと思うこともあるし、芸能界に憧れていたはずなのになんで個人で黙々と映画を作ってるんだと思うことも。
ただ、私の作品はアンチメジャーでもアンチインディーズでもなく新しい枠組みでありたいですね。
大崎:ちなみに、デビュー作は『燦燦 さんさん』?
外山:長編映画でデビューになると思うので、デビュー作は四年前の『燦燦 さんさん』と言ってます。その前に一度中編を25歳で撮って若手監督の仲間入りしましたが、そこから提案するものが全く時代と合わなかったですね。
大崎:助監督は?
外山:助監督は19歳から24歳くらいまでやりました。
でも、根底に書くことが好きというのがあったので脚本を書き始めました。
『星屑夜曲(ほしくずやきょく)』 という中編を作ったあとに5分の映像を作ってVIPOにエントリーしたけど、“小上手い”“エッジーじゃない”と言われてダメで。若手監督に求められるのは「まだ見ぬ空気感」なので自分は当てはまらなかったし、だから若手監督脱落組なんです。
28、29歳になって企画を持って行っても「若者らしくない」と言われてしまって。それで、暇な時に街を散歩したり喫茶店に行ったりしていたら高齢者だらけな事に気づいて、それで高齢者に向けて発表しようと思い『燦燦 さんさん』を書きました。
ただ、若者が「シニアの老後を豊に」と言っても説得力がないので、高齢化社会を見つめる作品を自分で作ろうと思い、29歳で『燦燦 さんさん』のために『此の岸のこと』を作りました。
大崎:それはすごいね。
「これ何歳の人が撮ったと思う?」と聞いたら「50歳くらい?」と言われるんじゃないかな。自分だけじゃなくてちゃんと他人を見る目を持ってるということだよね。
外山:生意気と思われるかもしれないけど、直木賞とかを女子大生が受賞しても書いてる内容は女子大生の話だったりする。
周防(正行)監督とかは40手前で中年男性の悲哀や若い人の物語も書けるし、そういう違う世代の人間にも気持ちを重ねられるのはプロだと思います。自分はどの世代でも気持ちを重ねられるようになりたいですね。
シャルマン 本店 (取材場所)
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