INTERVIEW&COLUMN
2017.09.05
大崎章監督×松本花奈監督 対談インタビュー
大崎:松本さんは映画監督の前に子役として活動されていましたが、何がきっかけだったんですか?
松本:もともとダンスがやりたくて、家の近所にあった劇団ひまわりに入ったんです。 そこでお芝居の練習もするようになったのがきっかけですね。 1番始めにやったお仕事が、小学1年か2年の時に出演した子供向けの飲み物のCMのエキストラだったんですよ。 ダンスメンバーとみんなで行って、お相撲さんと子供50人くらいで乾杯して歌う、という内容で。やっていることが衝撃だったんですよね(笑)。 今までにない経験すぎて。
大崎:その時の衝撃は「この世界で表現していきたい」と思った1番最初の衝動はなんだったの?
松本:1番最初だとそうですね…。衝動の話をすると、中学生の時にカメラや映像に興味を持ち始めてなんとなく自己流で映像を撮っていたんですけど、私は単純に文化祭みたいな雰囲気が好きなんです。 みんなで1つの映画を作るという時間が好きで。 それで、中学2年生の時に友達に協力してもらって『カブトムシ踊る』という映画を撮りました。 高校生になってからはKIKIFILMっていう映画製作団体に入ったんですけど、そこには監督をやりたい人だけでなく撮影や美術もやりたい人などいろんな人がいたんです。 そこでみんなで何かやりたいと思って作ったのが『真夏の夢』で、初めての長編映画です。
大崎:女優から監督になって、良かったことや、見え方が変わったことなどはある?
松本:良かったことは、撮影の前段階から編集して完成するまでの全工程に立ち会うことができる事ですね。 自分が出演側だった時に思っていたのが、監督の雰囲気で現場の雰囲気ってだいぶ変わるなって。 それさえも撮影シーンによって使い分けられる監督って素晴らしいなと思うんです。
大崎:現場の空気を作るのが大切、っていう事なんだね。それは女優をやっていたからこそ見えた事なんじゃないかな。
松本:そうだと思います。みんなロボットじゃなくて気持ちで動いてるから、その部分って大きいと思うんですよね。愛される監督ってすごいな……って。 自分がやってみるとすごく難しいんですけど(笑)。
大崎:最新の映画『脱脱脱脱17』もそうですが、同世代の役者さんと一緒に映画を作る事も多いよね。松本さんが思ういい役者さんって、どんな人ですか?同世代ではどういう役者さんに出会いたい?
松本:こう言うと突き放す感じに聞こえてしまうかもしれませんが、勘がいい、1を言ったら10わかる人、は素晴らしいなと思います。 あとは、いろんな話し方をできる人。人って話し方で雰囲気が大きく変わると思っていて。自分独特の話し方だけじゃなくて、役によって話し方とか声のトーンを変える事が出来る人。
大崎:幅がある人ですね。感情に寄ったり、シーンに寄ったり。 ちなみにそれができるようになるためにはどうしたらいいと思いますか?これは1番難しいですよね。 世の役者さんが日々これについて悩んでいると思うんです。
松本:役者さんって自分をさらけ出さなくちゃいけない職業だから、例えばプライベートとかで大失敗をしたり壮絶な経験をしたり、役者という狭い世界だけじゃなくて大きな世界の中でいろんな経験をしたほうがいいんじゃないかな、と思います。 そういうのをたくさん乗り越えた、自信があって肝が座っている人はすごく魅力的ですね。
大崎:僕もよくワークショップをやっているんですが、松本さんは芝居ってどうすればうまくなると思います?同じ台本を読んでも100人の役者がいれば100通りの考え方があるでしょう。
松本:お芝居の役って、基本的に相手がいて会話をすることが多いから、ある種コミュニケーション能力が問われますよね。 作品の雰囲気を読み取る力。だから、論理的な面と感情的な面をどっちも持っている役者さんは魅力的ですね。理系の脳と文系の脳どっちも持ち合わせている、バランスが取れている人。
大崎:最後に、松本さんから見て「もっとこんな映画界になればいいな」ということがあれば教えてください。 僕たちは昔の映画界を知っていて、だんだん変わってきたじゃないですか。そしてこの5年くらいYouTubeが盛り上がってきて、松本さん世代はその中にいるわけじゃないですか。
松本:映画の醍醐味って、音の要素が大きいと思うんです。 だから映画館に行って音を聞く、という行為がなくなってしまうのはさみしいですね。 あとは、映画を作るときに予算ありきで考えないようになればいいな、と。もちろん予算を考えることはすごく大事です。 でも、予算がないから最初から全部やりたいことを切り捨てて安全パイを狙っていく体制は嫌だな、って。 映画を撮る、っていうこと自体が夢のあることだから、童心に戻るような気持ちで撮れる環境があるといいな、と思います。
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