INTERVIEW&COLUMN

2017.11.26

大崎章監督×酒井麻衣監督 対談インタビュー 前編

大崎:映画との出会いは何がきっかけですか? 

酒井:私が小学校1年生の時に妹が生まれて、母が妹につきっきりだったので父が映画館によく連れて行ってくれたんです。父の趣味でモスラを観に行ったりしたんですけど、すごく面白くてハマっちゃって。蝶々(?)っていうだけで女の子っぽいから好きで。モスラのことを怪獣界のお姫様だと思っていました(笑)。私、妖精とか魔法とか信じているタイプの子だったんですよ。サンタクロースもいるってずっと信じてたし、信じたかった。両親もなんとか信じさせてあげようと努力をしてくれていたんですけど、中学生になって「あれ?」って思い始めて。

大崎:「あれ?」って思い始めた時はショックじゃなかった?

酒井:ショックでした。周りの友達が変わっていくのもショックでした。「あそこのトイレは幽霊が出るらしい」みたいな話が好きだったのに、中学に入ってからは「あの先輩かっこいい」とか恋愛の話ばっかりになってショックだった。

大崎:でも普通、ショックを受けるまでもなく妥協するじゃん。そこでショックを感じるところがいいなって思ったんだよね。

酒井:それで中学の時は「メルヘン」ってあだ名をつけられたんですけど、周りにそう言われていても、私はどうしてもサンタさんとかを信じたくて。じゃないと今までの14年間を全否定される気がして。それでいろいろ読み漁ったんです、文献とかを。

大崎:そこで諦めなかったのね。グリム童話とかを読んだの?

酒井:そうです。色々調べてみると、形は違うけどみんな嘘はついていないってことに気づいたんです。例えばサンタクロースも、元々は孤児院で暮らしている子供に対して1人の男の人がプレゼントを渡すっていうお話があるんですけど、だったら「いい子にしている子には何かを渡す」っていう心自体がサンタクロースだよね、という解釈をして、その心が家庭に生きていれば形が変われどサンタクロースは存在しますよね、っていう結論にたどり着いたんです、中学生の時に(笑)。

私は高校生の時はずっと画家とか漫画家志望だったんですけど、大学見学で映画学科も見に行ってみたんです。なぜか映画監督って50歳くらいの人じゃないとなれないものだと思っていたんですけど、その時映画学科というものがあると知って。私は、実写のファンタジー映画に救われてきたからこそ同じことをしたい、と思ったんです。

大崎:それが高校3年生の時だよね。早いなぁと思って。『棒つきキャンディー』は自主制作なの?

酒井:あれは大学2年生の時に林海象ゼミで撮りました。そのあと3年生の時に『神隠しのキャラメル』、4年生で『金の鍵』を撮りました。

大崎:その中でゆうばり国際ファンタスティック映画祭に持って行ったのはどれ? 

酒井:一応全部持って行ったんですけど、『棒つきキャンディー』と『神隠しのキャラメル』がフォアキャスト部門で上映になって。私は卒業制作展ではなくて夕張に行って、みんなからは「あいつなんだよ」って言われました(笑)。

大崎:でもそこで直井卓俊さんに出会うんだよね。

酒井:はい、なので夕張に行ってよかった(笑)。MOOSIC LABのことも知っていたので、直井さんに「私も映画監督になりたいです」ってアタックしたんですけど、その時は全然相手にしてもらえなくて(笑)。しかもその前日がちょうど東京芸大の大学院の最終面接だったんですけど、それも落ちちゃって。それで大学卒業後は会社に就職したんです。

大崎:でもそうしているうちに直井さんから電話がかかってくるんでしょ?

酒井:そうです、というかいきなりメッセージが来て。「企画出してみますか?」みたいな感じで。すぐ飛びつきました。そこで直井さんが紹介してくれたバンドの中でVampilliaさんがすごく気になっていたんですけど、ある時ライブ当日に直井さんから「今日Vampilliaのライブがあるよ」って言われて、その時私京都にいたんですけど「私今試されてるな」って勝手に感じて(笑)、仕事を切り上げて東京までライブを見に行ったんです。そのライブを観てすごく感動して。PAと照明卓の真後ろで観てたんですけど、『いいにおいのする映画』のお話が思いついて、すぐに直井さんに提出したんです。

大崎:監督としてのことを聞きたいんですけど、『いいにおいのする映画』にしても『はらはらなのか。』にしても『棒つきキャンディー』にしても、何かになりたいっていう想いが酒井さんの想いを代弁しているような気がして。僕も映画監督で夢を実現したいっていう気持ちが作品とリンクしていることもある。『はらはらなのか。』は主人公の女優になりたいっていう想いと酒井さんがこれから映画監督としてやっていこうっていう想いがリンクしている気がするのですが、どうですか?

酒井:そうだと思います。特に『いいにおいのする映画』と『はらはらなのか。』に関しては。『いいにおいのする映画』は、照明技師という名の光の魔術師になりたい女の子と、映画監督という魔法使いになりたい私の気持ちがリンクしてて。

大崎:それすごく思ったんだよね。『いいにおいのする映画』がダメだったらもう諦めるという決意があったというのをどこかで聞いたんだけど、やっぱりそういう想いで撮ってたのかなという気がして。しかも主人公が酒井さんに似てるなって思うことがあったんだよね。そう言われない?

酒井:言われます。本当は全然似ていないんですけどね。『いいにおいのする映画』は特に。『はらはらなのか。』も1シーンだけ似てると言われます。『金の鍵』に関しては、私の母親、そして直井さんも主人公を私だと思っていたみたいです(笑)。

大崎:いや、俺もそうだよ(笑)。顔見せない撮り方してるし。本人出てるのかよと思って、よく見たら違うじゃん、って。でもこれって素晴らしいことで。やっぱり監督の想いが憑依するんじゃないかって思うんだよね。

ギオン(取材場所)

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