INTERVIEW&COLUMN
2018.01.27
映画「嘘を愛する女」対談インタビュー 〜俳優のスキルを高めるには?〜 前編
—「私、おっぱい出してました」—
延増:私は大阪芸術大学にいたんですが、大阪に維新派という劇団がありまして、その維新派の手伝いに行ったんですね、美術の。
中江:大学時代に?
延増:ええ。教授の助手をされてた方が、維新派の役者さんと知り合いで。
美術を手伝いに行ってるうちに、作業を終えた役者さんたちの稽古を見て、「わたしあっち側がしたい」って、ハッと思ったんですね。あの表現をしたいと。それまではモノを作る方が好きだったんですけど。
中江:陶芸やってたんでしたっけ?
延増:ええ。高校から美術学校だったんですけど、ビジュアルデザイン科で、主に平面で。それがだんだん立体になってきて、興味が。
空間になり舞台美術になり、みたいな感じですかね。だから魔が差したって言ったら私もそうかもしれないです。
初めて維新派の「ロマンス」という舞台を観た時に、なんかその時すごいおもしろそうって思っちゃったんですね。
でも私は役者って言うより、その時は維新派の劇団員になりたかったんです。何もない場所に自分たちの手で一から全てを作り上げるので。
中江:カッコイイですもんね。
延増:維新派は当時学生不可で。学校辞めようと思ったんですが、家族から猛反対受けて、とりあえず卒業はしてくれ、と。
卒業したのですが、その時、維新派のオーディションが無かったんですね。
じゃあ違う表現探そうってなった時に、どうすればいいかわかんないんで、とりあえず東京行ってみようと(笑)。
中江:計画性ゼロ・・・
延増:行き当たりばったりです私。それでいろんな舞台を見てるうちに、 劇団解体社に出会いました。
身体の演劇を探求していて、解体社を観た時に「うあーわたしこれかも!」って思ったんです。
中江:入ったんですか?そこに?
延増:手伝いたいって言って、入ったんです。
中江:美術を?
延増:演じる方をやりたいんですけど、すぐにやれないんだったら手伝わせてください、と。
そこに行って、稽古とか一緒にさせてもらえるんですけど、もう見抜かれてるんですね、「何もないこの人」って。
体も動かないし、表現も無いし、だから舞台監督の手伝いばっかりやってましたね。悶々としながら何年間か過ごしました。
中江:芝居の練習はしてたんですよね?
延増:みなさんと一緒にしてるんですけど、選ばれないんですよ。何が私に足りないんだろうって。表現者としてそもそもがダメなんだなって。
そんな時に、「あなたより年下の女の子がすごい面白い舞台やってるよ、あなたが好きかどうかはわからないけれど、この世界とは全く違う世界のことをやってる人がいるよ」って教えてもらったのが毛皮族だったんですね。
中江:マリーさん?
延増:江本純子さんですね。町田マリーさんは看板女優です。
で、毛皮族を観に行って、まあ若い女の子がおっぱい出すとこんなにお客さんが集まるんだって、すごい穿った感じで観に行ったら、そこで観たものは、なんかすごいテンションでぎゃーぎゃーやってるんですけど、一筋さ〜っと静かな川が流れてるような、一本筋通った何か衝撃を受けたんです。
そこで、これ面白い!ってまた思っちゃうんですよね。
で、「わたし、セリフが喋りたい」ってはじめて思いました。自分の言葉ではない言葉を、喋ってみたいって。
中江:で、前のところはやめたんですね?解体社。
延増:はい。わたし、セリフが喋りたいんですって。
中江:じゃあ毛皮族は入れたんですか・・・?
延増:すぐには入れないです。一旦、大阪に帰って仕事してました。そしたら、東京の友達から、毛皮族オーディションするよって。
中江:試験はどんな試験だったんですか?
延増:試験は、劇団員のじゃなくって、公演のオーディションだったんです。アンサンブルです。その他大勢の役です。
マイケルジャクソンの歌にあわせて好きにやって、踊ってくれっていうのと、この漫画のこのページをやってみてくださいって。コピーにしたものを渡されてその登場人物が何人かいるんですけど、その全部をやりました。
中江:それは狭き門だったんですか?
延増:100人くらい受けたと聞きました。受かったのは10人くらいですかね。
中江:最年長?
延増:30?31歳の方が1人いました。他はみんな20代前半です。
中江:そこで受かって、残れたんですか?
延増:その公演だけのためのオーディションだったので、一旦サヨナラですね。
だけど、次ライブがあるんだけど出てくれないですか?と連絡があって、出ました。そういうのが続いて、劇団員になりませんか?っていう感じでした。
中江:下世話な質問ですが、おっぱいは出したんですか?
延増:出してます。ニップレスは必ずしてますけど。恥ずかしくはないです。
中江:そこで芝居は教わったんですか?
延増:教わらないです。「その井戸から出て来て。その井戸から怖い感じで出て来て」っていう感じですね。面白くして、とか。私ほんとに演技の勉強してないんです。
中江:教わらないんだ。
延増:毛皮族の演出の江本純子さんに感謝すべきは、テンションとハートを鍛えられたことだと思います。
演技に関しては、演出家の頭の中に正解があったんですよ。江本さんが一番面白い。
だからその正解にそわないと、説明無くダメなんですね。
「もっと面白くして」っていうワードしか出てこないんです。
だからそこに近付くのに自分ですごく考えます。
劇団員の人たちを観たり、映画や舞台は特にその頃むちゃくちゃ観てますね。
何が面白いのがわかんないから。自分で探したって感じです。
必死にやってみて、江本さんが笑ってたりすると、すっごく嬉しいんです。宗教みたいですね(笑)
中江:今の事務所は?
延増:毛皮族の舞台を事務所の社長が、観てくれて、うちにどうですか?と誘ってくださいました。
それで初めてCMや映像のオーディションに行くようになって、外の世界はこんなんなんだっていう衝撃を受けて、自分には足りないことだらけで、何も太刀打ち出来ないって。
この星の数程いる役者さんの中で何も勝てないなって。
※『嘘と寝た女』予告編より
田中壮太郎
1970年東京生まれ。1996年に劇団俳優座入団、2015年まで在籍。現在 is 所属。
主な出演映画に「ソロモンの偽証(前編/後編)」、「湯を沸かす程の熱い愛」、「逆光の頃」、「おとうと」、「京都太秦物語」など、
主なドラマに「トクソウ」(WOWOW)、「相棒」、「フリーター家を買う」など、
主な舞台に「さらば八月の大地」、「リア」、「東京原子核クラブ」、などがある。
俳優の他、舞台演出と翻訳も行う。
※『嘘と寝た女』予告編より
延増静美
1976年生まれ。大阪府出身。
2000年 大阪芸術大学工芸学科卒業。2004年、劇団『毛皮族』公演オーディションに合格。
その後、2013年までのすべての公演に出演。
現在は映像作品にも活躍の幅を広げている。
近年の主な出演作に、舞台「ジャガーの眼 2008」(作:唐十郎、演出:木野花)、「十二夜」(作:ウィリアム・シェイクスピア、演出:鵜山仁)、映画「アイアムアヒーロー」(監督:佐藤信介)、「フリーキッチン」(監督:中村研太郎)、
TVドラマ「三匹のおっさん3〜正義の味方、みたび!!〜」(TX)、「WOWGOW TV SHOW」(WOWOW)などがある。
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