INTERVIEW&COLUMN

2017.09.05

『黒い暴動❤』という映画について「ルーズに火をつけて」

いざクランクインすると、そこは地獄のような現場だった。

夏設定の本作だが、撮影は9月下旬から10月下旬。
石川県は雨が多く、撮影期間もよく雨に降られた。
ギャルは普通の人より露出が極端に多い。キャストは本当に寒かったと思う。

更にこれまたギャル特有の困難さなのだが、メイク時間が長い。
つけ睫毛はあるし、茶髪のカツラはあるし、黒く塗るのも露出が多いのでほぼ全身塗らなくてはならない。
一人あたり1時間半かかるのに、(自分でメイク出来るblack diamondは除いて)
キャストとしてのギャルの人数は7人、これだけで普通に計算したらとんでもない時間がかかってしまう。勿論、ギャル以外のキャストもいるわけだし…。

スタッフは全員でロケ地から程近い、旧福祉センター(という名の廃墟)を掃除してそこに住み込み、キャストは綺麗だがロケ地まで1時間かかる宿泊地から毎日往復をしていた。
徐々に徐々に疲弊が蓄積していくキャスト・スタッフ陣。

そんなある日、black diamondの一人が明らかに体調が悪そうにしている。
彼女らの多くはウルヴァリンのように長い爪をしているのだが、どうやらどこかに引っ掛けて生爪から剥がれてしまい、そのせいで熱が出ているらしい。
とはいえ、一発目からいきなりハードなパラパラのシーン、「今日は無理しないで休んでて」というと「いや、自分どうしても出たいんで頑張ります」と言って、養生テープで自分の爪を巻きだした。
そんな状況を見ていたら、何だか無性に涙が出てきた。

勿論、こんな過酷な環境で撮影しているのは僕の責任だし、もう二度とこんな環境で撮影をしてはいけない。
だが、とにかく今目の前で頑張ってくれているキャストやスタッフのためにもなんとしてもこの映画を面白くしなければならない。

ロケ地である内灘高校の校長は「校舎を燃やす以外なんでもしていい」と言ってくれ、地元内灘の方々は毎朝5時に僕らに朝食を作って持ってきてくれた。
内灘町役場の人たちは車が足りなくなると、役場の車を車両として貸してくれた。

制作部は電流の走っている鉄線を鷲掴みにしていることにすら気づかない集中を見せながら牛の立ち位置を移動させてくれ、演出部は「サンセットブリッジ封鎖出来ません」という『踊る大捜査線』さながらのセリフを叫びながら雨の中必死で車止めをしてくれ、キャストは朝起きると毛穴から黒い色素が出てきて布団が真っ黒、更に睡眠不足も相まって肌も荒れていく中、ただとにかく作品を良くするために夜中までパラパラの自主練や読み合わせを続けてくれた。
本当に誰か一人でも欠けたら、そして誰か一人でも別の人間だったら成立しない現場だったと思う。

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