INTERVIEW&COLUMN
2017.08.08
夏の原色
よく晴れた日の、夏の夕暮れが好きだ。
日中の暑さが落ち着きはじめ、それでも外を歩くと首すじにじんわり浮いてくる汗のかんじも、すこしづつ暮れていく空を見上げるのも、ぬるめのシャワーを浴びた瞬間の心地いいかんじも。
住宅街を歩いたら、立ち並ぶ家先からお風呂の匂いや晩ご飯をつくる匂いがして、わたしはそんな中をスーパーで買った食材を手に家に帰って、夕食前に缶ビールを空けながら、サザエさんを見る日曜日―だったりなんかしたら、もう、最高だ。
文字だとなんとなく伝わる気がするけれど、それを映像で描くのってとても困難な気がする。
そんなふうなシーンが撮りたいって言っても、それはそんなふうなシーンであって、完璧なその瞬間には適わない。
でも、たとえば夕暮れの住宅街を歩くシーン、というだけの説明をしたときに、お芝居をする前に歩く場所を見渡しながら、きっとあの家からは焼きそばをつくる匂いがする、なんて言ってくれる役者がいたなら、わたしは一発でそのひとのことを好きになると思う。
それで実際に見ず知らずのその家から焼きそばをつくる匂いを出してもらえるなら最高だけど。 たとえその匂いが映像に映らないことをその場にいる全員がわかっていたとしても。
夏と言えば、夏祭りもいい。
浴衣姿で歩く初々しいカップル。 お小遣いで何を買えるかと悩みながら歩く、体操着姿の学生たち。 短パンとタンクトップで缶チューハイを飲みながら歩くお兄さんたち。
屋台が並ぶ通りは普段よりも濃く色づいていて、そこで買ってたべるものは、チープな味のはずなのにすべて懐かしくて、何よりも美味しく感じる。
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