INTERVIEW&COLUMN
2017.09.13
監督は何を以ってOKと決断するのか
2015年に行われた第1回TSUTAYA CREATORS' PROGRAMでグランプリを獲得し、「嘘を愛する女」(長澤まさみ・高橋一生 主演) の公開を2018年に控える中江監督の監督コラムが始まります。 第1回目は、撮影時に「監督は何を以ってOKと決断するのか」について語っていただきました。
中江和仁
1981年生まれ。武蔵野美術大学卒。広告制作会社(株)サン・アドを経て独立。CluB_A 所属。
パナソニック、サントリー、資生堂、ゆうちょ銀行などのCMを監督。
大学の卒業制作である「single」はPFFにて観客賞を受賞し、海外の映画祭に出品される。
その後もCMに並行して短編映画を撮り続け、
2008年の「string phone」はアジア太平洋広告祭の短編映画部門にてグランプリを獲得。
2011年の「蒼い手」はサンフランシスコ短編映画祭でグランプリ。
同年、ndjc(若手映画作家育成プロジェクト)にて「パーマネント ランド」を監督。
2015年に行われた第1回TSUTAYA CREATORS' PROGRAMでグランプリを獲得し、
「嘘を愛する女」(長澤まさみ・高橋一生 主演) の公開が2018年に控える
公式HP:http://club-a.aoi-pro.co.jp/creators/?id=22
静かにカメラが回り始める。
助監督がこれ見よがしのスピードでカチンコを叩く。
何ページにも渡るセリフ、5分以上の長芝居、テイクはゆうに10回を超えている。
特機部は息を殺し、カタツムリが這うような速度で移動車を押している。
録音部はブームを支える筋肉を微妙に変え、限界にきている腕を騙し騙し使っている。
監督の「カット」の声がかかっても、誰一人として口を開かない。
美術部は、何事もなかったかのように黙々とセットを直していくし、
撮影部は、いつでも回せる体勢へと戻っている。
そして、監督は表情ひとつ変えずつぶやく。
「もう一回」と。
何がダメだったのか。
俳優は考える。
セリフはとちらなかったし、感情もうまく乗った。
間もたっぷりとって、自分としてはかなり上手く演じられたと思っている。
なのに…。
誰か教えてくれ。なぜもう一回なのか。少しオーバーすぎたのか?
気がつけば3時間も同じことを繰り返している。
どこを変えればいいのか、どうすればOKが出るのか?
クッソ、俺はいじめられているのか?これは嫌がらせか?
我慢できなくなった俳優は監督に尋ねる。
「どこがダメだったんですか」と。
大抵の監督は前もってそのシーンを、芝居を、頭の中で想像している。
何度も何度も、テープが擦り切れるくらいループしている。
(しかも監督自身が脚本を書いていたとしたら、
決定稿に採用されなかった、その何倍もの可能性をも想像しているはずである)
では、監督の思い描いた通りに芝居が行われたのなら、それはOKなのだろうか。
監督は何を以ってOKと決断するのか。
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